渡辺悠樹准教授 第25回素粒子メダル 受賞
物理工学専攻の渡辺悠樹准教授が第25回素粒子メダルを受賞しました。
同賞は、素粒子論の発展に重要な寄与をされた日本物理学会素粒子論グループメンバーを顕彰する事により、次世代の独創的研究を生み出したいという願いのもとに創設されたものです。受賞の対象となった業績は「南部-Goldstone定理の普遍的定式化」で、受賞者、および受賞理由は以下のとおりです。
○ 日高義将氏・村山斉氏・渡辺悠樹氏
「南部-Goldstone定理の普遍的定式化」
[受賞理由]
H. Watanabe, H. Murayama, Phys. Rev. Lett. 108 251602 (2012)
Y. Hidaka, Phys. Rev. Lett. 110 091601 (2013)
日高氏および渡辺氏・村山氏は、それぞれ独立した論文において、南部–Goldstoneの定理の普遍的定式化を成し遂げた。対称性およびその自発的破れは、物理学のさまざまな分野において極めて重要な概念である。特に相対論的場の理論では、連続的対称性の自発的破れにより、破れた対称性の数だけ質量ゼロのモード(南部–Goldstoneボソン)が現れることが知られており、この現象は南部–Goldstoneの定理として体系化されている。しかし、対称性の自発的破れは、ローレンツ不変性を持たない非相対論的系においても広く見られる。このような系では、南部–Goldstoneボソンの性質が系ごとに異なり、個別に研究されてきた。近年、これらの現象を統一的に理解する試みが進められる中で、ローレンツ不変性のない系における南部–Goldstoneモードの一般的理論を提示したのが、渡辺氏・村山氏、および日高氏による独立した研究である。両者の研究は、以下のような重要な結論を導いた。まず、破れた対称性に対応する生成子の交換関係の真空期待値に基づき、生成子を可換なものと非可換な組に分類する。そして、出現する南部–Goldstoneボソンの数は、可換な生成子の数と非可換な組の数の和になることを示した。さらに、分散関係に関しては、可換な生成子に対応するモードが線形分散、非可換な組に対応するモードが二次分散となることを明らかにした。これらの成果を、渡辺氏・村山氏は量子場理論における有効ラグランジアンの方法、日高氏はMori射影演算子法という、それぞれ異なる手法を用いて導いた。このように異なる理論的アプローチにより南部–Goldstone定理の普遍的定式化に貢献した両者の研究は極めて高く評価されるべきものであり、素粒子メダルにふさわしい業績であると選考委員会は判断した。
授賞式は2025年9月16日~19日に広島大学で開催される日本物理学会第80回年次大会において行われる予定です。
素粒子メダル 素粒子メダル功労賞