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物工PICKUP
工学部物理工学科OB:平田 裕也

卒業生からのメッセージ

物理工学科は、自然界の最小構成単位である電子や光子が従う普遍的な物理法則、及びそれらの量子的性質を最大限に活かした素子開発/情報工学を探究しています。新たなナノテクノロジーの可能性を追求する、世界最大規模の研究教育拠点です。

2024年3月28日更新
写真:卒業生からのメッセージ2023年度 平田裕也
大学院工学系研究科物理工学専攻
修士1年 平田裕也:2024年3月28日時点

学生から見た物理工学科

「新技術の種」を作る
現代工学では、波動関数の重ね合わせやスピン等の量子的な自由度は殆ど活用されていません。それらの量子統計的要素を取り入れた新規工学の可能性を模索するのが物理工学科です。これまで、量子状態を基本単位として計算する「量子コンピュータ」、電荷とスピンの両方を活用する「スピントロニクス」、時空の歪みを捉える「光格子時計」、未踏探索空間を切り拓く「新物質創成」などの様々なアイデアが生み出されてきました。
物理工学科は東大工学部の中で最も基礎研究に近い学科の一つであり、今後ここで生み出された技術の種が既存の計算/通信/センシング技術を進化させる上で必要なピースとなるかもしれません。確立済みの技術領域を活用する他の工学科とは質的に異なります。
カリキュラム
物理工学科の必修講義は、いずれも基礎物理(及びそれに準ずる数学)に特化しています。量子統計や固体物性に関する座学講義がセメスター別に設けられており、最終講義を終える頃には工学部随一の物理力を体得できます。また、ハイレベルな理論演習や伝統的な工学実験の機会も設けられており、研究者としての実践スキルが身に付きます。希望者は計数工学科の講義も受講できますが、こちらは座学メインなので、実装・開発の経験は独自に積む必要があります。
4年次には、全員が実験系の研究室に配属され、世界最先端の研究テーマを与えられます。これまで培った自らの物理センスをフル活用して、ナノ物理の未解決課題に挑みます。理論系の研究室は院生以降でないと志望できませんが、興味がある学部生は、卒業研究と並行して輪講に参加可能です。
物理工学科に来て良かったこと
物理工学科は物理学への熱意に満ち溢れたメンバーで構成されています。有志の学生によって催される「自主ゼミ」では、各々が好きな物理の話題を持ち寄り、自由に議論できます。配属される研究室も籤引きで決まるので、同期と成績を競う必要はありません。そのため、学生間の仲間意識が強く、知的好奇心の赴くままに学問に取り組めます。
また、基礎研究の業界で著名な先生方が集結しており、量子物理を学ぶ上で最高レベルの環境が整っています。ナノ世界の物理を創り、応用することへの熱意をもつ学生にとって、物理工学科は一つの最適解だと思います。逆に、物理への興味があまり無い方にはお薦めできません。

進学選択を控えているみなさんへ

1年次の自分は、基礎科学よりも寧ろ社会の役に立つ技術領域に興味があったので、早い段階から工学部への進学を決意しましたが、学科選びには時間を要しました。もしあなたが工学部内での学科選択に悩んでいるのなら、各工学科の技術との関わり方の違いに注目してみてください。「新技術の種を作る」「それを萌芽させて実用可能なレベルにする」「確立済の技術を活用する」「技術と社会を繋ぐ」。将来どの工学プロセスに携わる人材になりたいかを見極め、最適な学科を決められるといいでしょう。

この時期は進学先で人生が決まると思いがちですが、院進や留学、就職活動などこの先何度でも転機は訪れます。学問への熱意さえあれば、専門領域は無数に増やせます。これはあなたの「最初の専門」を決める場です。是非、自身が最も興味を抱く領域に挑戦してください。