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物工PICKUP
2019年度:アサバナント・ワリット/奥村 駿

先輩たちの研究活動

幅広い研究領域を持つ物理工学科。
4つの研究ジャンル、各研究室の先輩たちがそれぞれの研究生活やその魅力を語り合いました。

2019年11月27日更新
写真:2019年度:アサバナント・ワリット/奥村 駿

参加メンバーMembers

写真:奥村 駿
奥村 駿
【物性理論・計算物理系】
求研究室 D2
写真:アサバナント・ワリット
アサバナント・ワリット
【量子情報系】
古澤研究室 D2

理論の求研、実験の古澤研

奥村「一つの研究目標を量子コンピュータの実現に置いているという点は、古澤研も求研も共通していますね。
求研究室は一言でいうと、電荷やスピンといった、電子系の多様な自由度を活かした物質設計を行う理論系の研究室。量子コンピュータの材料となりうる磁性体のモデル作りも盛んに行われています。今研究室が力を入れているのは、トポロジカルな性質を持つ磁性や電子状態の安定性と系の形状依存性に関する研究です。電子系の電荷や軌道、スピンといった自由度に加えて、規則正しく並んだ格子の形や次元性を変えることで新しい物性が現れないかという可能性を探っています。理論の研究は紙とペンでやるイメージですが、求研はコンピュータを用いた数値計算をします。トポロジカルな磁性のように、物質内でたくさんの粒子が集まることで生まれる現象を解明するには膨大な計算が必要で、求研はそのアルゴリズムに特化しているところが魅力です」

ワリット「古澤研は光を使った量子コンピュータの実現を目指す、実験系の研究室です。今いろいろな量子コンピュータが出てきていますが、古澤研が目指しているのは、特定の計算だけに特化したものではなく、あらゆる量子計算が可能なユニバーサル量子コンピュータ。また、超伝導やイオンを使った現在主流の方式と違って光を用いている、世界的にも数少ない研究室。それも、時間領域多重技術という古澤研独自の方式を追求しています。他の研究室の理論家などと組んで研究することもありますが、アイデアは借りても、実験のプロセスから作り上げるのは全部自分たち。理論を自分たちで考えることも多いですね。最近では新しい実験設備の研究など、手がけるテーマがさらに拡大しています」

説明できる面白さ、
予測不能の面白さ

奥村「数値計算を使うことでより実験に合った結果が得られるので、実験家ともコラボしやすいという利点があります。実験結果がきれいに説明できるとかなりうれしい。特に、物理工学専攻内での強相関電子系の実験を行っている研究室とは交流が盛んで楽しいです。基礎物理を主にする理学部と違って、物質科学をやる上ではいい環境だと思います」

ワリット「実験系の研究には、やってみないと何が起こるか全くわからない面白さがありますね。物質内のたくさんの粒子が相互作用で複雑に絡み合って、当初イメージしていたことと全然違ったことが起こります」

奥村「確かに。それが宝の山というか、うまく一発当てればすごいということもありますね。そこを我々理論家がある程度予測して、サポートしていきます。古澤研が扱っている光って、個性が豊かな電子系と違って、もっと基本的な、人間が制御しやすい物理じゃないでしょうか。それを量子コンピュータに用いるのは良い選択という気がします」

ワリット「そうですね。電荷やスピンなど、自由度が高いものほどいろいろな可能性を秘めているけれど、自由度が高い分だけ相互作用によって計算も狂いやすく、一長一短です。でも、最終的にはいろいろな物理を取り入れた量子コンピュータができ上がっていくのではないでしょうか」

研究スタイルも向き不向きが

ワリット「古澤研では大きなテーマが決めてあるだけで、先生から『これをやって』と言われることはほとんどない。信頼のもとで自由にやらせてくださいます。学生は大抵2、3人のグループで実験をやっています。グループでのコミュニケーションは必要だけど定期的なミーティングも特になく、これをやりたいけど誰に聞けばいいとか、自分たちで探ってやるので、自ら行動したり考えたいという考えの人には向いていると思います。話題になっている最先端のことを、同じ興味を持った友人と話せるのが楽しいですね」

奥村「求研は真逆で、1人1テーマを持って、個々に研究を進めていきます。週に1度ミーティングをして、そこで他のメンバーが何をやっているか情報交換しています。あとは、先生や助教と頻繁に話しながら研究を進めています。理論家の先生はあまり熱く指導したりしない印象ですが、求先生は学生と密にコミュニケーションを取るタイプです。理論の研究室の特徴は、近くの理論系の研究室間の垣根がないこと。学生が一部屋にまぜこぜで入っているので、自分の研究室の先輩がカバーしていないような話もしやすいという利点があります」

研究室を目指す後輩の皆さんへ

奥村「理論系は将来の就職先がイメージできないかもしれませんが、今は量子計算やAIニーズの高まりで、統計や数値計算に強いところを買われるので、どこでも引っ張りだこです!」

ワリット「古澤研は、そのまま研究者になる先輩もいれば、電子回路や装置設計の技術を活かしてメーカーに就職する人も多いですね。最近は量子コンピュータのベンチャーも増えているし、量子コンピュータの仕事ができる場は今後も世界的に広がっていくんじゃないかと思います」

奥村「それと、研究室を選ぶ時は、先生の性格や研究スタイル、指導方針をリサーチしておくといいですよ。学部の授業での先生のイメージは、研究室で見せる姿と違うことが多いので。先生と話した感じや面倒見の良さなどは研究室を訪問して確かめた方がいいです。研究室は大学院においてかなりの時間を過ごすコミュニティですから」

ワリット「特に、古澤研のように一人でやらない研究室は、相性も大事ですね」

研究生活Q&A素朴な疑問、先輩に聞いてみました

Q1 研究室には1日に何時間いる?
奥村
コアタイムがあるかどうかは研究室によって違うので確認を。理論系の研究室はコアタイムがないところがほとんどですが、ミーティングや合同セミナーに積極的に参加する姿勢が求められます。博士課程になってからは9時10時に来て18時19時に帰っています
ワリット
古澤研も時間の縛りはなく全て自己責任。実験が忙しい時期は朝から晩までいて、そうでない日は昼来て6時くらいに帰ります。論文は土日に書くことが多いです。実験装置の順番待ちをすることはうちではほとんどありません
Q2 研究の忙しさやストレスは?
奥村
学会に発表するネタをまとめなければならないため、学会前はプレッシャーです。それと、プログラムのバグ取りに追われて物理や数学をやらない時間も多くあり、今日も進まなかったと焦ることも
ワリット
光の実験はセットアップに時間がかかるし、特にデータを取る時は忙しい。思い通りに動かない時のデバッグは疲れますが、そこを楽しむほかないですね
Q3 研究テーマはどう決める?
奥村
物質の理論の研究はたくさんのものが絡み合っているため計算に時間がかかります。Enterを押してから計算が終わるまで1年かかったら論文どころか卒業もできないので、現実的な時間内に解けてかつ面白いテーマを考えるのが数値計算屋の腕の見せ所です
ワリット
古澤研で一番時間がかかるのは、何を作るか決めることと、実験装置を作ること。卒論では1年しか研究期間がないので、大きな研究テーマの一部を卒論として切り出したりして、先輩と一緒に進めます
Q4 研究室に進む前にやっておくべきことは?
奥村
物工ではどこでも、線形代数の勉強が大事。量子力学をやっていると基本的にはこればっかりです。行列やベクトルの取扱いに関する知識で差が付きますね
ワリット
古澤研は情報系なら得意ですが、回路や信号処理などの勉強を学部時代にもっとやっておけば良かったと思うことがあります