物理工学輪講第二
6月20日
[注意事項]
輪講第二の「題目」・「要旨」は発表の1週間前までに office[at]ap.t.u-tokyo.ac.jp 宛てに送付して下さい。
発表日
2023年6月20日(火)14:55〜16:55

Aグループ

発表者名 田中 優貴
指導教員名 齊藤 英治 教授
論文題目 生成機械学習と拡散過程
要旨 拡散モデルとは、データを生成する機械学習の手法の一つであり、データにノイズを加えて得られる拡散過程の逆過程を学習することにより、データ空間の確率分布における勾配を推定する手法である。本発表では、この拡散モデルについて、画像生成とその原理に焦点を当てて紹介する。
発表者名 東條 開斗
指導教員名 齊藤 英治 教授
論文題目 非線形非対称超伝導素子を用いたKerr-Cat Qubitの生成・安定化・操作の実証
要旨 量子演算を担う量子ビットにおいては、いかに量子状態の意図しない変化に伴う初期化・制御エラーを防ぐかが重要な課題となっている。シュレディンガーの猫状態は巨視的量子状態の重ね合わせに情報を担わせるため、ノイズ耐性に優れた量子ビットを構成することが可能であると期待されている。この量子ビットのことをcat qubitという。本発表では、非線形・非対称な超伝導素子を用いることでcat qubitを生成し、またその量子操作の実証に成功した論文を紹介する。
発表者名 涌谷 暢宏
指導教員名 齊藤 英治 教授
論文題目 スピン軌道トルクを利用した電流による磁化制御
要旨 空間反転対称性が破れた系に電流を加えると、物質中の電子はスピン軌道相互作用に由来した実効磁場を感じる。実効磁場由来のトルクを利用することで、電流を介した磁化方向の制御が可能になる。本発表では、スピン軌道トルク(SOT)の原理を概観し、閃亜鉛鉱型半導体(Ga,Mn)Asにおいて実際に電流誘起磁化反転を観測した研究を紹介する。

Bグループ

発表者名 佐藤 陽紀
指導教員名 杉本 宜昭 教授
論文題目 界面強誘電体における導電性と共存する累積分極
要旨 近年、二次元物質を用いた二層構造の強誘電体が発見された。この物質の注目すべき性質は、二次元物質の層をずらすことで生じる面外の分極と、面内の導電性を両立させている点である。発表では、この分極が多層構造になるとどのような性質を示すか、また電荷をドーピングするとどのような変化が生じるかということについて、原子間力顕微鏡により得られた像を用いながら紹介する。
発表者名 重野 智宏
指導教員名 杉本 宜昭 教授
論文題目 1T-TaS2におけるモット絶縁体とモザイクメタル
要旨 1T-TaS2は基底状態でモット絶縁体になる性質と電荷密度波(CDW)秩序をもつ性質をもつ。これらはそれぞれ電子-電子相互作用と電子-フォノン相互作用に起因するもので、1T-TaS2について詳しく調べることで強相関系について手がかりを得ることが期待される。本論文では電圧パルスによって誘起されるモザイクメタル相を研究し、層の重なり方とモット相の直接的な関係性を見出した。
発表者名 永山 裕一
指導教員名 長谷川 達生 教授
論文題目 メニスカスを用いて塗布する有機半導体薄膜トランジスタ
要旨 有機溶媒に溶かし塗布して形成できる有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタの開発が注目されている。その性能向上には、界面電荷トラップ低減のため、表面自由エネルギーの小さいゲート絶縁層の利用が有効である。一方、その種の絶縁層表面は撥液性が高く、塗布による製膜が困難であった。ここでは高撥液な表面上での半導体溶液のメニスカス制御により、極薄かつ均質な半導体結晶層を形成する手法と、得られたデバイスで理論限界に迫る高急峻スイッチング動作を実現した研究を紹介する。