物理工学輪講第二
6月14日
[注意事項]
輪講第二の「題目」・「要旨」は発表の1週間前までに office[at]ap.t.u-tokyo.ac.jp 宛てに送付して下さい。
発表日
2022年6月14日(火)14:55〜16:55

Aグループ

発表者名 渡邊 瀬名
指導教員名 石坂 香子 教授
論文題目 μ-ARPESを用いた原子層WTe2の電子状態の観測
要旨 テープを用いた剥離によるグラフェンの作製方法が確立して以来、遷移金属ダイカルコゲナイドなどの層状化合物の単層・数原子層フレーク試料における低次元電子状態の研究が盛んに行われている。原子層レベルに薄い物質では、低次元化に伴う対称性の変化や閉じ込め効果によって、バルク結晶とは異なる電子状態および物性が発現し得る。これまでの研究は主に第一原理計算で得られた電子構造を参照しつつ輸送特性測定によって進められてきたが、計算のコストや精度などの問題が研究進展のボトルネックとなっており、電子状態の直接観測が求められている。本発表では遷移金属ダイカルコゲナイドの一種である、2~5層WTe2の電子状態を角度分解光電子分光によって実験的に観測し、その積層数による電子状態の変化を対称性の観点から考察した論文を紹介する。
発表者名 梶田 遥一
指導教員名 木村 剛 教授
論文題目 フェロアキシャル秩序と2次の強的秩序
要旨 対称性の破れた系においては、強的秩序(ferroic order)が発現しうる。本発表では、新たな強的秩序の可能性のある「フェロアキシャル秩序」についての研究を紹介する。また、「2次の強的秩序」と呼ばれる秩序を有する点群と、フェロアキシャル秩序を有する点群のオーバーラップから期待されるフェロアキシャル秩序の制御の可能性について触れる。
発表者名 服部 航平
指導教員名 木村 剛 教授
論文題目 Cr2O3における非相反な光学現象
要旨 物質に対して電場、磁場を印加するとそれぞれ磁化、分極が誘起される現象を電気磁気効果と呼ぶ。電気磁気効果を示す代表的な物質であるCr2O3は、その磁気対称性に起因して、
電場印加によって偏光面が回転する「電場誘起ファラデー効果」や反射光が旋光する「非相反旋光効果」といった特異な非相反光学応答を示すことが知られている。本発表では、
これらのCr2O3において観測される非相反光学応答について紹介する。

Bグループ

発表者名 廣田 雄輝
指導教員名 為ヶ井 強 准教授
論文題目 銅酸化物超伝導体への重イオン照射による欠陥構造とその効果
要旨 超伝導体の臨界電流密度を上げるためには、結晶構造の欠損により生じる磁束のピン止め効果を強めることが必要である。その手法として有効なものが、イオンを資料に照射し意図的に欠損を作る手法である。今回の発表では、高温超伝導体として知られる銅酸化物超伝導体に対して様々なイオンを照射したときに生じる欠損の構造と、その効果について述べる。
発表者名 井上 裕貴
指導教員名 関 真一郎 准教授
論文題目 ベリー位相に由来した異常ホール効果とワイル点
要旨 ベリー位相に由来する異常ホール効果について、ホール伝導度の表式を導き、必ずしも磁化に比例しないことを見る。また、大きな異常ホール効果の源泉としてワイル点を取り上げる。最後に、異常ホール効果とワイル点の観測例として具体的な強磁性金属と反強磁性金属を紹介する。
発表者名 葛西 章也
指導教員名 関 真一郎 准教授
論文題目 磁気スキルミオンの発現機構とその物性
要旨 トポロジカルな安定性と粒子性により、次世代の情報担体として期待されている局在スピンの渦構造「スキルミオン」とその形成機構を概観する。これまでは、スキルミオンは空間反転対称性の破れた物質にのみ発現すると考えられてきたが、最近では空間反転対称性を保つ物質においてもスキルミオンが出現しうることが分かっている。これまでの形成機構と、スキルミオンの高密度化を狙った新しい理論を、物質例を織り交ぜながら比較する。最後に、スキルミオン特有の物性であるトポロジカルホール効果にも触れる。