物理工学輪講第二
5月17日
[注意事項]
輪講第二の「題目」・「要旨」は発表の1週間前までに office[at]ap.t.u-tokyo.ac.jp 宛てに送付して下さい。
発表日
2022年5月17日(火)14:55〜16:55

Aグループ

発表者名 田中 愛登
指導教員名 十倉 好紀 卓越教授/金澤 直也 講師
論文題目 スピン間相互作用によるらせん磁気構造とスキルミオン形成
要旨 今回の発表では、まず磁性の起源である複数のスピン間相互作用や、その競合によって現れるらせん磁性について説明し、
らせん磁気構造の重ね合わせ状態として理解されるスキルミオン格子と呼ばれるトポロジカル磁気状態について解説する。
特にスキルミオンの様な非共面磁気構造上の伝導電子はベリー位相を獲得し、実効的に数百テスラもの電磁場を感じるとされている。
この創発電磁場やトポロジカル安定性に起因した物性とその応用についても紹介する。
発表者名 永濱 壮真
指導教員名 十倉 好紀 卓越教授/金澤 直也 講師
論文題目 トポロジカル不変量とトポロジカル絶縁体
要旨 トポロジカル絶縁体(TI)とは、トポロジーと呼ばれる幾何学をバンド構造に適応したものである。本輪講ではTIの先駆けとなる「量子ホール効果」と、時間反転対称性を持つ2次元TI,3次元TI,またそれを規定するトポロジーについて解説する。
発表者名 吉川 大模
指導教員名 十倉 好紀 卓越教授/金澤 直也 講師
論文題目 Berry位相と異常Hall効果
要旨 近年、トポロジカル物質と呼ばれる物質群が注目を浴びています。物質のトポロジカルな性質の最も基本的な概念となる幾何学的位相、Berry位相の導入を行い、Berry位相の作り出す創発磁場によって生じる異常Hall効果についてその歴史や実験例と共に紹介いたします。

Bグループ

発表者名 伊豆 駿佑
指導教員名 鹿野田 一司 教授
論文題目 量子ガラス
要旨 結晶中の電子は、移動積分(~電子の運度エネルギー)より相互のクーロン斥力が大きい場合は、互いに距離を取って局在しようとする。バンドが1/4-fillingの系では、格子点の半分の数の電子が存在するが、このとき基底状態を考えると、正方格子では1個おきに電子が局在する配置が安定な状態になる。しかしθ-(BEDT-TTF)2Xのように分子が準三角格子を組む物質では、一つおきに電子を配置することができず(幾何学的フラストレーション)、マクロな数の乱れた配置がエネルギー的に縮退しているため、高温の電荷液体状態から急冷すると、揺らいでいる電子配置が不均一なままに凍結するガラスのような状態になる。この電荷ガラス状態は古典的なガラスのように長距離秩序が存在しない、揺らぎの速度が秒、分、時間まで減速するなど、通常の絶縁体や金属とは異なる特異な振る舞いを示す。本発表では電荷ガラスの由来とその実験的性質について説明する。
発表者名 和田島 周星
指導教員名 鹿野田 一司 教授
論文題目 三角格子モット絶縁体における量子スピン液体状態の探求
要旨 三角格子上にあるスピンが隣接サイト間で反強磁性的に相互作用する場合、全てのスピンを同時に反平行に揃えることができない(幾何学的フラストレーションと呼ばれる)。この状況下では、スピンの量子揺らぎが顕在化し、基底状態が長距離秩序を持たない「量子スピン液体」が生まれることが理論的に予言されており、三角格子を持つ有機物質において実現している可能性が指摘されている。このように磁気的相互作用が大きいにも関わらず極低温まで相転移を起こさない系においては、比熱や熱伝導度といった熱的な測定が有効であるとされ、低エネルギー状態においてどのような励起機構が実現しているのか、議論されている。また、モット絶縁体
κ-(BEDT-TTF)2Hg(SCN)2Br は、低温においても秩序化しない電気双極子をもつ、「量子電気双極子液体」となることが確認され、他の物質においてもスピン液体状態を説明する手がかりとなることが期待されている。
発表者名 生方 大翔
指導教員名 高橋 陽太郎 准教授
論文題目 遍歴強磁性体SrRuO3における異常ホール効果に由来するテラヘルツ領域のファラデー効果
要旨 異常ホール効果を説明する理論として、バンド構造のトポロジーに関係するベリー位相理論が注目されている。また、ファラデー効果は異常ホール効果の光学的側面として挙げられる。本発表では、テラヘルツ時間領域分光法を用いたSrRuO3に対するファラデー効果の測定を通して、異常ホール効果へのベリー位相理論の適応を実験的に示した研究を紹介する。