談話会・セミナー

第6回 理論グループ共通セミナー (講師:山地 洋平 氏)
2009.12.22

日 時 2009年12月22日(火)午後4:30~
場 所 工6号館3階セミナー室A
講 師 山地 洋平 氏
題 目 フェルミ面のトポロジーを巡って現れる量子臨界と量子相の物理
概 要
通常の熱的な相転移は、「自発的な対称性の破れ」すなわち熱的なゆらぎで安定化されている高い対称性(無秩序)の状態から、低温で相互作用エネルギーの利 得がある低い対称性の状態へと自発的に変化することで生じます。一方零点振動のような量子力学的なゆらぎが高い対称性を安定化しているときには、量子ゆら ぎを抑制すると何らかの自発的な対称性が破れる相転移―量子相転移―が絶対零度で生じます。
なかでも、磁気秩序などの秩序相が絶対零度において融解する臨界点のまわりの量子臨界現象が、 銅酸化物高温超伝導体を含む遷移金属化合物や、重い電子系を含む希土類・アクチノイド化合物、 有機導体といった強相関電子系に見られる多くの異常な現象を理解する鍵であるという提案が多くなされています。とくに遍歴電子系では、金属の一般論、フェ ルミ液体論の予言と異なる比熱や帯磁率、輸送係数の温度依存性(『非フェルミ液体』的挙動)や、非BCS的な異方的超伝導が見られ、この起源が量子臨界で はないかと注目を集めてきました。実際、フェルミ面近傍の低エネルギー準粒子励起と臨界的な揺らぎの絡み合いに注目した理論―SCR理論やHertz- Millis理論など、自発的対称性の破れと量子ゆらぎの相乗に基づく考察―が試みられています。また、銅酸化物でも何らかの自発的対称性の破れに伴う量 子臨界点の周りのゆらぎが高温超伝導発現や異常金属相の振る舞いを説明するという提案がいくつかあります。
しかし近年、実験技術の進歩・試料の純良化によって、このような従来の単純な予測に従わない挙動や、臨界点と見られていた量子転移が実は1次転移であっ たという事実が報告されています。銅酸化物においては必ずしも従来型の量子臨界を引き起こすべき自発的対称性の破れが何なのか自明でないばかりか、対称性 の破れとは直接の関連が不明なフェルミ面そのものの異常が低ドープ域のフェルミ面の切断―フェルミ・アーク―などの形で多数観測されています。
本講演では、このような謎を理解する鍵として、従来の量子臨界の理論が前提とする自発的対称性の破れとは全く異なる機構による量子相転移―トポロジーの 転移―の引き起こす物理についてお話しします。特にフェルミ面の運動量空間でのつながり方、つまり『フェルミ面トポロジー』の変化に着目し、(1)フェル ミ面トポロジーの変化がもたらす量子1次転移と新奇な量子臨界現象を紹介し、さらに(2)銅酸化物のようなキャリア・ドープされたモット絶縁体における特 異な
フェルミ面トポロジーの変化を説明する新しいタイプの「励起」が新しい量子臨界をもたらすだけでなく、新しい量子相をも生み出すようすについて、我々が得た成果を紹介します。

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