談話会・セミナー

第3回 計算物理・化学コロキウム (講師:諸熊 奎治 氏)
2009.07.06

日 時 2009年7月6日(月) 午後2時~午後3時
場 所 理学部4号館1220号室
講 師 諸熊 奎治 氏(京都大学福井謙一記念研究センター)
題 目 複雑分子系の分子理論によるシミュレーション
概 要:
理論化学・計算化学は理論的方法論の進歩にもとずく高精度の達成と計算機の高速化により大きな進歩を遂げ、比較的簡単な系の化学的問題に対しては高信頼度 で理論予測が出来るようになった。最近化学の本流はより複雑な分子系の設計に移りつつあり、より複雑な問題を理論的に高精度に取り扱って新しい物質の理論 設計を行う“複雑分子系の高精度シミュレーション”が必要になっている。高化学精度ab initio法で複雑分子系(数百~数万原子)の高精度長時間(106回の計算)シミュレーションを行うことは現在でも不可能であり、いくつかの方法を組み合わせた複合分子理論の採用が望ましい。
本講演では、上述の目標に向けて我々が行っている研究のうち、炭素ナノ構造体の生成機構とタンパク質内での化学反応(酵素反応)の機構について、いくつかの例について話す。
炭素ナノ構造体の生成機構については、平衡からかけ離れた高温炭素蒸気では自己形成?自己触媒など不可逆過程が重要になるので、分子動力学(MD)によ る長時間トラジェクトリーが必要になる。一方これに使うポテンシャルとしては分子力場(MM)では不十分で、炭素原子間の共役や遷移金属クラスター触媒の 縮重性を考慮した量子力学(QM)的取り扱いが必要である。我々はQMとして近似的なDFTB法を用い、QM/MD法によって生成機構の研究を行った。 “Shrinking Hot Giant Fullerene Road”と名付けたフラーレン生成機構を概論したあと、遷移金属クラスターを触媒としたカーボンナノチューブの生長シミュレーションの最近の結果をのべ る。
たんぱく質内での化学反応の機構の解明は複雑分子系のシミュレーションの究極の目標の一つである。反応に直接関与する原子だけを考慮する活性部位モデル にくわえて、たんぱく質をQM/MM法であらわに取り入れた計算を行いその差を比較することにより、周辺たんぱくが反応機構にどのような影響を与えている か明らかにできる。さらにたんぱく質の構造/運動の統計平均から自由エネルギーも評価できる。本講演では、いくつかの生体反応に関しこれらの方法を適用し た例を通じて、蛋白の効果が多様にわたっていることを示す。

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