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【物性理論・計算物理代表】

自由放任、研究はマイペース
沙川研究室 M2

吉沢 徹

【先端物質創成代表】

メンバーのキャラが濃い
川﨑研究室 D3

大内 祐貴

【量子物性代表】

担当教授は教育熱心
岡本・貴田研究室 D2

森本 剛史

【量子情報代表】

クレイジー(!)な時計を研究
香取研究室 M1

水嶋 玲

研究室の面白さは中の人に聞け!
各分野を代表して4研究室の先輩たちに
それぞれの研究の醍醐味や研究生活を語っていただきました。

Part 1
大内 祐貴 × 森本 剛史

 

Q. 今の研究室、どう選んだ?

森本:「僕は光に興味を持って、レーザー光を使っている岡本・貴田研究室を選びました。同時に物質にも興味があったので、物質を対象としてどっちも研究できる点が面白そうだと」

大内:「僕は新しい物質を合成する面白さに惹かれて。物質を作る研究室はいくつかあるんですが、川﨑研究室は先輩や先生の雰囲気が面白かったです。先生は元気でポジティブ、学生もガンガン行こうという感じ」

森本:「川﨑研はキャラが濃いですよね(笑)。岡本先生は教育熱心だと先輩から聞いていたんですが、入ってみてそれを実感しました。研究に対する推進力もすごくて、やはり教授はエンジンが違います」

Q. 岡本・貴田研と川﨑研、どこが違う?どう繋がる?

森本:「簡単に言うと、川﨑研は物質を作る研究。岡本研は、他の研究室で作った物質をもらってレーザーを使って測る研究」

大内:「川﨑研は、他のグループが作れないようなクリーンな結晶や、誰もやっていない新しい構造を作ったりして面白い材料を見出していく。一方で、そういう新しい物質を具体的に測ってさらに面白さを見つけていくのが岡本研などの物性系の研究室ですね」

森本:「同じ物性の研究室でも対象としている物質が少しずつ違うので、それぞれ興味が近い研究室と組んで研究しています」

Q. 岡本・貴田研究室の面白さって?

森本:「光を使って物質を調べているんですけど、なぜ光を使うかというと、ものすごく微細な空間で、ものすごく短い時間の間に起こる現象を捉えることができるからです。例えば高速で動く原子の運動を10-15秒くらいのレーザー光で捉えることができます。他の手段では見ることができない極限の領域を扱えるのが面白いですね」

大内:「何の物質を扱うかはどうやって決めているんですか?例えばある物理的な疑問があって、こういうものに光を当てたらそれがわかるんじゃないか、とか?」

森本:「いくつかパターンがあります。調べたい現象に対して光でアプローチするとか、光でこういう現象を引き起こしたいからこういう物質でやってみよう、とか。物質を作る側の人は前者が多いですよね。新しくできた物質を調べるために光を使うという。後者の方は物性のテーマの一つでもあるんですが、たとえば光を当てると絶縁体だったものが一瞬で金属になるとか、光を使って物質を操ることを目指す研究もあります」

Q. 川﨑研究室の面白さって?

大内:「光を使う研究も同じかもしれませんが、物質合成の醍醐味は、誰も作ろうとしなかった物質から新しい現象を我々が最初に見つけるという面白さですね。それを理論家の方や光で測る方などに持って行ってさらにどんどん広がっていくのも、その物質を最初に作った人の面白さです」

森本:「それは、物質をもらう側にとっても面白そうだなと思います。一回当てればどんどん分野が広がっていって、論文にも名前が載り続ける、夢のある宝くじ(笑)」

大内:「森本さんの場合は、自分で作った一つ手法を使って酸化物から有機物までいろいろな物質を測るという広げ方ができる。それは物質を作っている我々にはない面白さだと思います」

森本:「確かに、うちにはものの測り方を開発するという側面もありますね」

Q. 研究はどうやって進めていく?

大内:「岡本研ではいろいろな物質を扱っているんですか」

森本:「そうですね、情報収集しながら。これはダメだったけれど、似たこの物質ならどうかとか。物質を作る人より諦めは早いと思います(笑)」

大内:「うちの研究室だと、ダメモトでやってみたら結構うまくいっちゃって研究が一気に進むということも結構あります。生の間に結果を出すというリミットはあるので、考えられることはできるだけ試していきます。3か月以上粘って最後の最後にうまくいくという人もいますね」

森本:「僕の場合は1ヵ月くらいやってダメなら諦めます。やっている間は少しずつ階段を上っていく感じなんですか?」

大内:「ちょっとずつ条件を詰めていって改善していきますね。一気に解決できる場合もありますけど」

森本:「数をこなさなくちゃ、ですよね。授業で川﨑先生が『東大生はどうしたらできるかと考え過ぎる。やれることはある程度決まっているので、考えるよりとりあえずやってみろ』と言っていました(笑)」

大内:「それは極端だけど、考えながら要領よくやっているつもりでも、結局はやれることを全部やり尽くしていたということはありますね(笑)」

森本:「確かに、やってみるというのは大事。うちも同じです」

大内:「川﨑研では新しい特性を持つ薄膜を作っていますが、何かできそうな新しい材料を使って作ることもあれば、既存の材料でまだきれいな薄膜が得られていないものを使ってきれいな結晶を作ることもあります。二つ以上の物質をナノスケールで積み重ねたヘテロ構造というものになると、単体の物質では見られないような変わった現象が出てきて、何を組み合わせるかはやってみないとわからない。予想外にうまくいく時もあれば、失敗する時もあります。先行研究や理論計算を参考に面白そうなものを選んでいます」

森本:「理論家の人からの提案もあるんですね。うちでも『これをこう使うと絶対面白いからやってみて』と言われることがありますよ」

大内:「新しい物質を測って面白いことがあると、理論家に持って行って現象の理論的なサポートを受けて、理論と付き合わせて論文の中身を深めていきます」

森本:「一つの実験だけだとある一面しか見えないけれど、理論や他の実験と照らし合わせて見ると全体像がよくわかりますね」

Q. 自分の研究室にはどんな人が向くと思う?

森本:「僕の場合は物質を作るのは大変そうというイメージがあって、むしろ測る方専門にした方がいいのかなと思いました」

大内:「合成は大変ですけど、きれいな膜を作るという過程を楽しめる人が向いていると思います。逆に僕から見たら、光学の細かい実験系を組み立てるのは大変そう」

森本:「慣れると意外と楽しいですよ(笑)。岡本研の場合、測定系を自分の手で組み上げることも研究の一部なので、そういったことが好きな人は向いていると思います。自分が作り上げた装置を使って、世界で誰もやっていない測定ができるのは本当に面白いです。あと、教授が教育熱心なので、丁寧に教えてもらいたい人にも向いていると思います」

大内:「川﨑研は、物質創成では世界に負けない高度な研究ができるところ。つまりこの物質はここが面白いとか、自分で決めて自分で世界に発信できます。もちろんライバルはいっぱいいますが、自分たちで考えながら探っていける面白さを感じられるはずですよ」

[取材:2017年11月28日]

大内さんと森本さん

Part 2
水嶋 玲 × 吉沢 徹

 

Q. 今の研究室、どう選んだ?

水嶋:「香取研は4年生になってからいろいろ調べて初めて知りました。研究室紹介で『標高差数cm程度で時間の進み方の違いが見える』と聞いた時は、なんてクレイジーなんだろうと衝撃を受けました。相対論をcmレベルで見られるなんて、と興味を持ったのが最初です」

吉沢:「私は学部時代、樽茶研究室にいました。もともと物性の研究がしたかったんですが、座学で学ぶうちに量子力学そのものに興味が湧いてきて、量子力学を使って物性を研究している樽茶研に進みました。修士で沙川研究室に進んだのは、実験に取り組むには手が不器用だし、プログラミングがもともと好きで、数値計算の方が向いているように思ったから。理論の研究室はどこも量子力学を扱いますが、中でも一番基礎よりのことをやっているのが沙川研でした」

Q. 理論系と実験系、それぞれの特色は?

水嶋:「香取研のように実験をやっていても理論は必要になるので、理論家とも協力しながら進めるし、理論と実験のどちらが良いということはないと思います。でも、確かめて実証するのは実験系でないとできないことですね。それと、香取先生がスカイツリーで実験をすることがニュースになったりと、一般の人にも比較的わかりやすいのではと思います。実験室ではいろいろな色のレーザー光が飛んでいたりして近未来的で、シンプルにカッコいい(笑)。学問の面白さとは別ですが、それも楽しさの一つです」

吉沢:「私も実験ってカッコいいなというのはあります。今理論側の立場に立って思うのは、実験結果は何よりサイエンティフィックに優先されるべきものですから、その意味で実験は最前線に立てるという面がありますね。理論は実験結果で否定されることが往々にしてあります。それに実験は、自分の手で何かをやっている感覚が強い気がします」

水嶋:「そうですね」

吉沢:「一方、理論系のいいところは、環境に依存せずに自分の力を発揮できること。先人の知恵や実験結果を参考にしつつも、自分で一から構築していかないとできません。これが実験だと、ある程度の人手や装置が必要なので、自力でやる部分が相対的に小さくなります。論文でも、理論の場合は単独や2、3人の共著が多いけれど、実験は大がかりになるほど共著者も増える。自分のコントリビューションが大きいのが理論の魅力です。
それと、理論の方がテンポ良く研究ができます。実験はやりたいことを実現するためにどうするか考え、装置を組み立て、苦心して実験して測定して、解析もしてと、ステップが多いけれど、理論はこういうことができるかもしれないと思いついたら一気に話を進展させることができる。僕も実際、計算の凡ミスに気づいた瞬間に一気に成果を出せたという経験をしました。すぐにできるけど間違いも起こしやすいというのが理論の良さでもあり恐さでもあります」

Q. 沙川研の面白さって?

吉沢:「沙川研は一言で言って、統計力学を研究しているという言い方が一番近いと思います。統計力学とは、たくさんある物の全部の詳細を見るのではなく、統計的な性質を見出してそこから何か言えないかと探るやり方です。その中で僕が所属する量子斑は、統計力学を根底に置いて、ミクロの世界を記述するような量子力学からマクロの世界を記述する熱力学を再現することができるかというテーマに取り組んでいます。身近な例で言えば、コーヒーは混ぜてもそのまま放置しても同じように室温になるまで冷めますが、その現象が量子力学の世界でも現れるのか、といったことに取り組んでいます。もう一つの生物斑では、情報熱力学を使って生物の物理を探るという研究をやっています」

水嶋:「情報熱力学ってInformation Thermodynamicsですよね」

吉沢:「そうです、沙川さんが立ち上げに関わった。物理に詳しい人ならマクスウェルの悪魔ということばを聞いたことがあると思いますが、一見熱力学の法則に反するような問題が、情報という概念を取り入れることで熱力学と矛盾しないことを説明したのが沙川さんの仕事の一つです」

水嶋:「孤立量子系を扱っているという点では香取研と共通していますよね」

Q. 香取研の面白さって?

水嶋:「香取研で研究している光格子時計は、外からの影響を何も受けていない原子を対象として、誰が何をしても絶対に不変と考えられる周波数をもとに、時間の標準とするという原子時計の一種です」

吉沢:「孤立量子系を実際に作って実験できるというのは私も興味があります」

水嶋:「原子は宇宙のどこへ行っても同じというのが原子時計の発想の源です。現実には電場とか磁場がかかっていて孤立していないのでいろいろとズレが出るわけですが、レーザー光を使って周波数を固定してやれば、すごく精度の高い時計ができるのではないかということですね。原子の遷移に周波数を安定化させるという行為を英語ではInterrogation(尋問する、問い合わせる)というんですが、原子に「この周波数だよね?」と問い合わせて、違ったら直す、というようなことをしています。香取研の光格子時計の面白いところは、1つのイオンにレーザーの周波数を安定化させる従来のイオン時計とは違って、光格子にたくさんの原子を孤立させておいて、同時にInterogationすれば、一気に大勢の原子からの情報を得ることができるという点です。世界的にあまり例のないことなんですが、香取研ではいま3〜4種類もの原子で光格子時計を作っていて、違う原子同士の時計を比べて本当に同じ時間を示すのかと、物理の根底を疑ってみるような実験もしています。漠然とした表現ですが、世界一の時計を作りたいというのが今の研究のモチベーションですね」

吉沢:「秒の定義、変わりそうですか」

水嶋:「変わるかもしれませんね。光格子時計も基準となる時計の候補に挙がっています」

Q. 自分の研究室にはどんな人が向くと思う?

吉沢:「沙川研は定期ミーティングも特になくて、自分で研究を進めて煮詰まったら先生と議論、というスタイルなので、自由な半面、自分でペースメーキングする必要がある。それができる人が向いています。1から10まで指示して欲しい人だと大変だと思います」

水嶋:「指示待ちがNGなのはうちも同じですね。香取研は手を動かす機会がとても多い研究室なので、回路とかものの設計とか、得意なことややりたいことがある人は向いていると思います。自分がやりたいことを先生に言えば、すごく面白いテーマをくださるんです。例えばマイクロコンピュータをやったことがあると言えば、それを世界最先端の研究の中で面白く活かすアイデアをいただけます」

吉沢:「沙川先生も話しやすいですね。若いし、気さくな方ですよ」

[取材:2017年11月28日]

水嶋さんと吉沢さん

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